2017年9月8日の金曜日、当社営業部メンバーと来春入社予定の大学生、総数9名で大王製紙三島工場(愛媛県四国中央市)を見学しました。
到着後、まず動画で工場の概要を予習しました。同社の基幹工場である三島工場には3つの強みがあります。
1)敷地面積167万㎡の世界最大級の臨海工場
●東京ドーム36個分の敷地内に抄紙機17台、塗工機(コーター)4台
●生産量年間約210万トン、国内紙生産量の約10%に達し、国内屈指のコスト競争力を持つ
2)多様なパルプ・紙を一貫生産している
●あらゆるパルプ、2万種以上の紙を生産
●新聞用紙、印刷・出版用紙、情報用紙、包装用紙、段ボール原紙、家庭紙
●抄紙機17台は時代のニーズの変化に合わせて生産する紙を変えている
3)先進的な環境・リサイクル技術を有している
●これまで原料にならなかった難リサイクル古紙(CD・DVD付き古紙、PPフィルム付古紙、背糊付き古紙)の利用拡大に努めている
●古紙の脱インキ粕を填料(紙に配合して不透明性を向上させる薬品)として再利用し産業廃棄物の発生量を削減している
以上の内容でした。
その後紙の資料室を見学、三島工場で生産されている新聞用紙、印刷・出版用紙、情報用紙、包装用紙、段ボール原紙、家庭紙(ティッシュペーパー、紙おむつ)についてその使用実例を交えながら説明していただきました。マンガ雑誌向けの更紙は生産量が落ちているがコミック本向けの紙はそれほど落ちていないこと、アマゾンなど通販向けの段ボールケースは宣伝媒体としても使われていてその場合まず原紙に印刷してからケースに加工すること、家庭紙分野において中国では日本よりさらに高品質の「プレミアムおむつ」が売れ筋であることなど細かい話が印象に残りました。
無線マイクとイヤホンを渡され、技術開発部の小林さんのガイドで工場に出発しました。東西に走る国道11号線をはさみ、南側(陸地)に旧工場、北側(埋立地)に新工場があります。チップの山を見ながらバスで移動し、最初にN7、N8抄紙機とNo.3コーターのある建屋に入りました。残念ながらマシンは定期点検中で止まっていましたが、マシンを見渡す集中管理室に入り、原料のパルプの実物を見せながら紙ができるまでを説明してくれました。
パルプ原料は水分が99%ですが、(1)網(ワイヤー)にのせて水分を流す(これで水分80%に)(2)ローラー加圧でさらに脱水する、また湿った紙をフェルトではさんで水分を吸着させる(水分50%に)(3)ドライヤーで水分をとばす(水分6%に)という工程です。
さらに次のNo.3コーターで鉱物とでんぷんを混ぜ合わせたものを片面づつ塗布し、印刷の写りを良くするとともに紙腰を向上させます。マットコートはこれで終わりで、コート紙はこの後スーパーカレンダーでたくさんのロールの間に紙を通しながらツルツルに磨き上げて光沢を出すことでできあがります。最後に穴などの欠陥部分はないか確認しながら幅約8メートルの巻き取り紙をあげていきます。1巻74000メートル、四国中央市から南国市までの距離に相当します。そのあと平版加工室で出来上がった紙を決まった大きさに切り分け完成させます。
現場を見ての感想は、あまり人がいないということ(2台で11人)です。主に品質不良が起きないように管理の目を配るのが主な仕事ということでした。場内はとにかく暑く、マシンが回るともっと暑くなるそうです。
その後三島工場が誇るN10抄紙機に案内されました。幅8.1メートル長さ365メートル、原料パルプがワイヤーにのり紙になるまでが一つの箱の中というマシンで、分速約1700メートル(時速約100kg)で流れるので原料パルプが紙になるのに約20秒という速さです。1日800トン生産されます。
最後にエリエールタワーに上りました。地上180メートルの展望台。もともとが集合煙突なので気温40度でとにかく暑く正直なところ長居できません。しかし抜群の眺望で瀬戸内海や四国山脈、四国中央の街並みを満喫しました。
最後の質疑応答でユトリロ上質の優位性について質問しました。当社としてはノートやメモの仕事に使う機会が多く、特に四国で入手しやすい大王製紙製印刷用紙に期待しているからです。答えは、紙粉が少ない、不透明度が高い、筆記特性に優れ、消しゴムで軽く消せる、蛍光染料不使用などの特長があり、メーカーからも高い評価を得ている、とのことでした。大変安心するとともに心強く思いました。
全体的に環境対策の徹底とともに品質とコストの両立への執念を感じました。専用港を備えた広大な埋め立て地に並ぶ工場のレイアウトからはじまり、無人の工場の中を轟音を立てながら動くN10マシンは圧巻でした。たまたま見学の翌日、日経の四国版に子会社大王海運の記事が掲載されていました。