こんにちは。私は今年4月に入社した山本と申します。
現在営業部に所属し、仕事を通じて日々知識を身に付けています。
当社では今年1月、オフライン印刷物検査装置「コレクトアイ・シス」を導入しました。これは印刷物の刷り出し時の不良を発見するものです。入社後の社内研修で一通り教わったものの、どのように使われて、どう役立っているのか現場の人にあたって尋ねる機会はありませんでした。今回は「コレクトアイ・シス」の(1)実際の運用状況、そして(2)導入後印刷現場はどう変わったのか、について当社工務部長の川田、印刷機長の山岡、掛水に話を聞きました。
実際の運用状況
当社の場合印刷物の刷り出し時のエラー原因として一番多いのは、刷版を持ち運ぶ際付く版キズによるものです。他にブランケットの凹みに起因する文字欠け、ピンホールなどが挙げられます。
これらを見逃すと印刷物の品質不良が同じ形で連続発生します。これを防ぐには刷り出し紙の検査が欠かせません。
アナログデータとアナログデータの比較検査(刷り出し紙の中の部分比較)
はじめにアナログデータとアナログデータを比較する検査方法です。1枚の刷り出し紙の中で1区画の柄をマスターとして指定し、同じ印刷物の残りの柄と比較することです。同じ柄が複数面付けされている場合に有効な方法です。
川田は検査をデモンストレーションしながら、印刷業界で昔から行われている検査方法「あおり」を説明してくれました。「あおり」とはマスターと比較対象の印刷物を2枚重ねた状態で、手前の印刷物を何回もめくりながら相違点やエラーを探すことです。こうしたチェックを行うにはある程度の習熟が必要で、しかも人の目頼みゆえに完全にミスが発見されるとは限りません。それに対し「コレクトアイ・シス」を使用すればコンピュータ画面でマーキングされた箇所を確認するだけでよいため、比べ物にならないほど少ない労力で済む、とのことです。
デジタルデータとアナログデータの比較検査(印刷物データと刷り出し紙の比較)
次にデジタルデータとアナログデータを比較する検査方法です。この場合のデジタルデータとは最終的に刷版出力したPDFファイルを画像化したものであるのに対し、アナログテータとは刷り出し印刷物をスキャンしたTIFF形式の画像データを指します。
ここで川田はデジタルデータとアナログデータを比較検査するときにつまずく3つのポイントを挙げました。
- 紙のサイズが合っているか
アナログデータは印刷機に通した紙をスキャンしたものだが紙の伸び縮みのためサイズが変わり、正確なサイズのデジタルデータとの間に違いが生まれる。 - 紙の地色が合っているか
アナログデータは紙にインキをのせたものをスキャンしたものであるがため、紙の地色やインキの色ムラも反映しているのに対し、デジタルデータには地色も色ムラも無く均一な色ののり方である。 - 網点か非網点か
アナログデータは印刷物をスキャンしたものであるため網点によって色の濃淡が表現されているのに対し、デジタルデータは網点で表現されているものではない。
「コレクトアイ・シス」が持つ様々な補正機能はこれらを解決し、デジタルデータとアナログデータを正しく比較検査し、不良を発見します。
川田によると「コレクトアイ・シス」の最大のメリットは「機械の目で徹底的に見ながら、最終的に人間が判断できること」です。
「業務中何時間も集中力を保持しながら、人の目だけで刷り出しを検査することは難しい。またベテランほど経験則で印刷物を見てしまうことが多い。経験上ありえないと思うエラーは無意識のうちに見ていません。」
「しかし機械のみで検査してしまうと誤検出が多くなります。特にファンシーペーパーへの印刷ではもともと抄きこまれているゴミや異物を発見するたびに不良と判断してしまいます。」
そのためには、コレクトアイ・シスのような機械による検査と人間の目による目視検査を兼用するのが現実的な方法だと思う、と結論づけてくれました。
導入後印刷現場はどう変わったのか。現場の印刷機長に聞きました。
Q.山本
「コレクトアイ・シスを導入してよかった点はどういうところですか。」
A.山岡機長
「印刷前に確実に版キズやブランケットの凹みで生じる文字欠けなどのエラーが分かるため、印刷途中で気付く場合と損紙の量が全然違っています。以前、エラーを発見した際は印刷物に付箋で目印をつけ、不良紙を取り除いていました。また不足した分、刷り直す仕事が増え苦労していました。」
「以前は刷り出し時、まず色出しを行い、見当合わせをした段階で一度印刷機を停止してから目視による検査を行っていました。その後、再度印刷機を動かして色合わせを行い本刷りを開始していました。しかしコレクトアイ・シス導入後は色出しをして見当合わせを行った段階で、検査にかけながら色合わせを行うことが可能になりました。このことで仕事の一つ一つを時間短縮することができています。特に繁忙期には大きな時間短縮につながっていくと期待しています。」
Q.山本
「コレクトアイ・シスを導入してどのような効果がでていますか。」
A.掛水機長
「大ロット、つまり通しがロングランの仕事のときは小さな版キズ1カ所でもかなりの量の損紙が発生します。しかしそうした忙しい時にはオペレーター2人で細心の注意を払いながら刷出しを検査していても目視だけではエラーを見逃してしまいがちです。そんな時コレクトアイ・シスが頼りになります。チェックに機械の目が加わったことで精神的な負担の軽減にもかなり役立っています。」
最後に
今回のレポートを通じて、「コレクトアイ・シス」の導入が印刷品質の向上に威力を発揮しているのみならず、現場の人々の負担の軽減にもつながっていることがわかりました。今後は、営業の中で「コレクトアイ・シス」の効果をお客様に紹介していきたいと思います。