リサイクル対応型印刷物への取り組み
なぜ、古紙リサイクルが必要なのか
森林資源を持続可能な形で利用するため
日本国内で使用されている紙の原料のうち、7割近くを古紙が占めています。古紙を原料に使うことで新たに投入される木材(パルプ材)の量が抑えることができます。現在、地球上の森林資源は著しく減少し、深刻な事態を招いており、その対策は重要な課題となっています。古紙のリサイクルは、大切な森林資源を守ることになります。
廃棄物処理費用を減らすため
可燃ごみの中にはリサイクルできる古紙が多く含まれています。ごみは収集、焼却後埋立て処分されますが、それには多額の費用がかかっています。また今後、ごみ処理施設の建替えや大規模修繕工事、焼却灰を埋め立てる最終処分場の整備等に新たな経費が必要となることが予想されています。古紙のリサイクルは、ごみを減らすことで、廃棄物処理費用を削減することにつながります。
地球温暖化防止を防ぐため
古紙を可燃ごみとして焼却する際、重油など化石燃料が使われるため、焼却処理することで二酸化炭素が排出されます。したがって古紙の分別・リサイクルは、可燃ごみを削減することにより二酸化炭素の排出量を減らし、地球温暖化を防止することになります。
紙リサイクルの意義と目標
古紙は製紙原料の主原料として国内で発生する安定した資源です。2022年の製紙原料に占める古紙の割合(古紙利用率)は66.3%で、ごみの減量化だけでなく、森林資源の保護や地球環境の保全に貢献しています。現在、資源有効利用促進法にもとづき、2025年度までに古紙利用率を65%に向上させる目標が設定され、製紙業界、古紙業界を中心にその達成に向け取り組んでいます。
「紙」から「紙」へのリサイクルが求められています
古紙の用途は、段ボールや紙箱(白板紙)などの「板紙」向けと、新聞用紙や印刷・情報用紙などの「紙」向けに分けられます。それぞれの古紙利用率は、2022年時点で「板紙」が93.7%と非常に高く、今後の向上余地が少ないのに比べ、「紙」は34.1%に留まっています。古紙利用率65%を達成するには「紙」分野の古紙利用率の大幅な向上が必要です。そのためには、通常の印刷物や出版物などに使用される印刷・情報用紙をもう一度、同じ印刷・情報用紙向けの製紙原料として回収・利用できるようにすることが重要です。
リサイクル対応型印刷物の普及が鍵
用紙、インキ、製本や表面加工、シールなど印刷資材の中には、製紙工程でトラブルの原因になるものや、製品(紙・板紙)の品質に影響を及ぼすものがあります。 そこで関係業界が協力して、リサイクル阻害性を克服した資材の開発、評価方法の確立に努め、普及を進めてきました。今後は、リサイクルを阻害しない資材だけを使って、まるごとリサイクルできる印刷物(リサイクル対応型印刷物)を普及させることが重要です。
- リサイクル対応型印刷物表示(説明文)例
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印刷物のリサイクル適性および使用済みになった場合のリサイクル案内を、わかりやすい場所に表示しましょう。
- この印刷物は、新聞用紙や印刷・情報用紙などの紙へのリサイクルに適した資材のみを用いて製作しました。
- 不要になった場合は、自治体や事業所のルールにしたがって古紙として分別し、リサイクルに出してください。
印刷物制作の企画・設計段階から、関係者の協力が必要
リサイクル対応型印刷物を製作するには、企画・設計段階でリサイクルに適した仕様を設計することが、非常に重要です。そのためには、発注者をはじめ印刷物製作に関わる、デザイナー、印刷・製本会社、資材の製造メーカーの協力が不可欠です。不要になったリサイクル対応型印刷物が、きちんと回収されることで、印刷・情報用紙向けの製紙原料の確保が促進されます。